大判例

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大阪高等裁判所 昭和62年(う)838号 判決

原判決は被告人に関する本件公訴事実に示された外形的事実は証拠によって認められるとしながら,本件ビラ貼りをした動機は,被告人が平和と民主主義の維持,発展を求め,多くの一般市民にアジアの実情を知ってほしいという心情によるものであり,ビラ貼りの方法は平穏であり,貼付された地域,場所,物件,ビラ貼りの態様等から,ビラ貼りによる法益の侵害は軽微であるところ,本件ビラ貼りは,憲法21条の表現の自由の行使であり,被告人及びその所属する毛沢東思想学院にとって,その主張や意見を伝達する最も重要な方法であるにもかかわらず,一般市民が自由に通行できる場所に貼ることの保障が十分でない等の事情を考慮すると,本件所為に対する可罰性が軽微な違法性で足りるものであることを前提としても,法秩序全体の見地から見て,本件ビラ貼り行為を軽犯罪法1条33号,大阪府屋外広告物条例17条1号,2条2項4号により処罰しなければならぬほどの違法性はない,とする。

しかしながら,所論指摘のとおり,大阪府屋外広告物条例は,屋外広告物法に基づき制定されたもので,美観風致を維持し,公衆に対する危険を防止するために,屋外広告物の表示の場所及び方法等につき必要な規制をしているものであり,軽犯罪法1条33号前段は,主として他人の家屋その他の工作物に関する財産権,管理権を保護するために,みだりにこれらのものにはり札をする行為を規制しているものであるから,右法及び条例は,その立法趣旨,罪質及び法定刑からみていずれも比較的軽微な法益侵害を処罰対象として軽微な罰則を設け,もって前示の目的を達成しようとしているものであり,従って特段の事情がない限り違法性の比較的軽微なものであっても,その行為の動機,目的の正当性や,貼付手段,方法の相当性,ビラが貼付されることによる被害の程度等によって構成要件該当性又は違法性が左右されるべきものではないと解するのが相当である。ところで,関係各証拠によれば,本件貼付現場周辺の堺市中瓦町から同市一条通にかけて,路上に設置されている堺市広報板3か所,関西電力の電柱7か所,警察の信号機柱3か所など合計17か所に25枚の本件と同種のポスターが貼付されていて,本件ポスターはこれらの一連のポスターの中に貼付されているものであり,更に被告人は本件により現行犯逮捕された際本件と同種のポスター20枚及び円筒状化学糊入り容器1個,軍手3枚を所持していて,本件逮捕がなければ更に同様の貼付行為を継続していた蓋然性が強く,また被告人が本件行為に及んだ動機,目的の正当性の点はともかく,その手段,方法は相当でなく,法益侵害の程度も軽犯罪法,大阪府屋外広告物条例の前記立法趣旨に照らせば必ずしも軽微とは言いがたいのであり,このような事情を併せ考慮すると,本件ビラ貼りは可罰的違法性を欠如するとしなければならない特段の事情も認められない。原判決は右のようにビラ貼りの目的ないし動機の正当性,貼付場所,地域,貼付した物件,貼付態様等から本件ビラ貼りによる法益侵害の程度が軽微であること等の理由で法秩序全体の見地から被告人の本件ビラ貼り行為には前記軽犯罪法及び大阪府屋外広告物条例により処罰することを必要とすべき可罰的違法性を認められない等説示するが,当裁判所はこれを肯認することができない。また,弁護人の見解も当裁判所の右判断を左右するものではない。

以上によると,被告人の本件ビラ貼り行為が軽犯罪法1条33号,大阪府屋外広告物条例17条1号,2条2項4号に該当することは明らかであり,これを否定した原判決は,右各条文の解釈適用を誤ったものというべきであって,その誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかであるから,原判決は破棄をまぬがれない。

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